近年、環境保全に取り組む企業が増えていますが、その背景として商品・サービスの品質レベルが高度化・均一化していることが挙げられます。品質レベルの高度化・均一化が進むにともない、他社と差別化を図る手段として「環境」で付加価値を謳う企業が増えてきたのです。
そのようななか、実際に「エコブランド」のイメージ確立に成功して業績を伸ばしている企業もありますが、一方で、環境法令に違反して窮地に立たされる企業が増えているのも実情です。
環境犯罪の法令別検挙事件数の推移(平成18年~平成28年) 単位:事件
総数 | 廃棄物 処理法 |
水質汚濁 防止法 |
その他 | |
---|---|---|---|---|
平成18年 | 6,030 | 5,301 | 5 | 724 |
平成19年 | 7,076 | 6,107 | 10 | 959 |
平成20年 | 7,173 | 6,124 | 5 | 1,044 |
平成21年 | 7,164 | 6,128 | 11 | 1,025 |
平成22年 | 7,179 | 6,183 | 5 | 991 |
平成23年 | 6,503 | 5,700 | 1 | 802 |
平成24年 | 6,503 | 5,655 | 4 | 844 |
平成25年 | 5,923 | 5,169 | 2 | 752 |
平成26年 | 5,628 | 4,909 | 2 | 717 |
平成27年 | 5,741 | 4,979 | 0 | 762 |
平成28年 | 5,832 | 5,075 | 0 | 757 |
注1:その他は、種の保存法、鳥獣保護管理法(平成27年5月28日以前は鳥獣保護法)、自然公園法等。
出典:環境省『平成29年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』
無届や未対応などの法令違反に関わった担当者には、法的処分および社内処分が科されます。多くの場合、工場長や環境管理の担当者などには罰金刑が科され、データの改ざんや虚偽報告があると詐欺罪などに問われ逮捕・懲役刑に至るケースもあります。
社内では、会社の経営に与えた影響の度合いによって免職・減給などの懲戒や降格人事などの処分が行われます。
違法行為をした経営者が社会的制裁を免れることはできません。株主から代表訴訟を提起され、莫大な損害賠償金を支払わなければならないケースも多く、最終的には引責辞任に追い込まれることがほとんどです。
法令違反を起こすと、企業自体にも大きなダメージが及びます。行政処分を受けて企業活動に支障が生じることもありますし、それ以上に致命的なのが、イメージダウンや消費者の不信感から売上げが激減するという社会的制裁を受けることです。大手スーパーなどで製品が取り扱われなくなり、業績に壊滅的な打撃を受けた企業の例をご存知の方も多いのではないでしょうか。
法令違反は、それ自体がリスクになるわけではなく、事故や事件、内部告発によって社会に発覚することによって大きなリスクになります。ほんの少しの法令違反が上記のようなリスクをもたらすことを、ぜひ肝に銘じてください。コンプライアンスを無視した経営をすれば、必ずそのつけを払うときが来るのです。
環境法令違反が新聞報道などで公になると、企業は取り返しのつかない事態に追い込まれます。落ち込んだ売上げを回復することも、失った信頼を取り戻すことも容易なことではありません。
このような苦境に追い込まれることがないように企業が最低限すべきこと――それは、環境法令を順守することです。「うちは大丈夫だろう」という思い込みや、「うちには関係ない」という勘違いは思わぬ命取りになります。環境法令を順守することは、すなわち「企業を守ること」だという認識のもと、ぜひコンプライアンスの強化に取り組んでください。
「エコブランド」のイメージ確立に成功して業績を伸ばしている企業、これは「攻めの環境ビジネス」に成功した企業であると言えます。一方、環境法令に違反して窮地に立たされる企業、これは「守りの環境ビジネス」に失敗した企業であると言えます。
日本の企業の実情として、「攻めの環境ビジネス」に投資しても、「守りの環境ビジネス」にはなかなか投資しないという現実があります。しかし、「攻めの環境ビジネス」で成功を収めている企業は、ほぼ例外なく「守りの環境ビジネス」に投資しています。攻めの前にまず守りを、しっかり過ぎるほど固めているものです。
御社は環境法令をきちんと守れていますか?
法令順守のために社内で誰がどんな取り組みをしているか、把握できていますか?
「自信がない……」「分からない……」という企業様は、「環境法令を“順守する”為にまずすべきこと」をぜひご覧ください。